垣間見





なんか…すっごく不思議な光景。


私が再び戦国時代に帰ってくる間に、私の周りでも変わっていたことがいくつもあったけれど、

一番身近な、あの人にも変わったことがあったなんて…ね。



ううん、そりゃ相変わらずぶっきらぼうで怒りっぽいのは変わらないんだけど。

そして、本当はとっても優しいとこも。



前にちょっとびっくりしたのは、たまに出稼ぎではあるが、人助けをしているって聞いたこと。

珊瑚ちゃんに子供ができてからは弥勒様と一緒によく出稼ぎに行っていたみたい。

まあ犬夜叉は進んでやっている、って感じじゃなさそうなのはなんとなくわかるけど、

それにしてもちょっと意外だった。



そして、今日はまた一つ、目を疑うようなことが、今目の前で起こっている。




「…あれ、犬夜叉よね」




今日は特に何か仕事があるとは言ってなかったのに、

いつのまにかたくさんの村の人達に混じって農作物の収穫作業をやっている。

犬夜叉は主に収穫物を所定の位置に運んでいるみたいだ。


「おい、これはもういいのかー」

「あーそれはもう持っていっとくれー」



半妖。そんなこと忘れちゃうくらい、ここにいる人達と溶け込んでいる。



「あぁ見えて、結構村の人達と仲良くやってるんだ…」



不思議、なんて嘘。私が知らなかっただけなんだ。

確かに私と犬夜叉が出会ったばっかりなんかは、もう人なんて寄せ付けないくらい、人間を嫌っていたのに、

今ではこうやって人と協力しあっている。

この3年の間に、私の知らないところで犬夜叉は自分なりに生きていたんだ。



ちょっと…淋しい。

でもそんなことより数倍嬉しい。



犬夜叉が村の人達と助け合っていることに。

村の人達が犬夜叉を頼っていることに…。



そんなことを考えながらこの田園風景を見ていたら、いつのまにか彼ら達は大盛り上がりしているようだった。



…もうちょっと近くで聞いてみようかしら。





「なに、犬夜叉はあのかごめ様の旦那だったのか!?」

「おぃ次郎、おめぇさん知らなかったんかい」

「ははははは」



…なんか私達の話じゃないのこれ。



「おい犬夜叉ーおめぇかごめ様とはどこまで行ったんじゃー」

「犬夜叉よーかごめ様はいつも美しいのう」

「犬夜叉ーあんま女房泣かせんなよー」

「だぁーお前らうるせえぇぇー!」

「ははははははは」



…は、恥ずかしい…。

仲良くっていうか、かわいがられてるじゃないのっ。



「もう帰ろ…」

と思って後ろを振り返った時。



「あ、あれはかごめ様!」

「おーい犬夜叉ーお前さんの女房じゃよー」

「えっ」



…えっ!?私皆から見えないとこにいたつもりなんだけど…ばれた!?



と思ったその時。

わっと村の人達の笑い声が響いた。


「て、てめえら、もしかして…!」

「冗談じゃよー犬夜叉」

「こんなにも簡単に引っ掛かるとはの〜」

「うるせぇってめえらいい加減にしやがれー!」




私はかなり胸をドキドキさせながら、この場を後にした。



つづき